遺言について 3
前回は、普通方式の自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言について述べました。今回は、あまり利用されていないですが、今後検討すべき価値があると思われる特別な方式の遺言をテーマとして、すすめたいと思います。
遺言については、遺言者の真意を確保するため、民法においては、厳格な方式が要求されますが、特別な事情(緊急時での生命の危機、又は隔絶地)のもとでは、前回で紹介した「普通方式」では行うことができない場合も考えられます。
この場合に、遺言の方式に従っていないとして、遺言を無効とすることは、遺言者の意思を尊重することができなくなってしまいます。
そこで、民法は、特別な事情があるために、普通方式の要件に従うことができない場合に、遺言の要件を緩和した四種の特別方式の遺言を認めています。
1.死亡危急者の遺言
疾病その他の事由によって、普通方式の遺言がすることができないときに、「死亡危急者の遺言」をすることができます。
要件として、(1)死亡の危急に迫った者が遺言をする場合であること。(2)証人3人以上が立ち会うこと。(3)遺言者が証人の1人に遺言の趣旨をを口述すること。(4)口述を受けた証人がこれを筆記し、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければなりません。
死亡危急時遺言は(1)~(4)の条件がすべて満たされていることが遺言の要件となっています。また、この方式によってした遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、効力が生じないので注意が必要です。
この遺言の方式は、あまり利用されていないですが、突然の命の危機に、どうしても遺言を残すことが必要な際に、証人3人の関与で作成できる点から、実務においても検討すべき価値があると思われます。
2.船舶遭難者の遺言について
船舶が遭難した場合においても特別方式の遺言によってすることができます。要件としては、(1)船舶が遭難し、当該船舶中に在って死亡の危急が迫った者が遺言する場合であること。(2)証人2人以上の立会のもと口頭で遺言を行う。(3)証人がその趣旨を筆記して、遺言者、筆者、立会人及び証人は各自遺言書に署名し、印を押さなければなりません。ただし、署名又は印を押すことができない者があるときは、立会人または証人はその事由を付記して署名捺印に変えることができます。
船舶遭難者の遺言は、(1)~(3)の要件を満たし、かつ、証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に確認を得なければ、その効力が生じません。
3.伝染病隔離者の遺言
伝染病で隔離されている場合についても、特別方式による遺言をすることができます。
この遺言の要件としては、(1)伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にいる者が遺言を行う場合であること。(2)警察官1人及び証人1人以上の立会いがあること。(3)遺言者、筆者、立会人および承認が各自遺言書に署名捺印してあること。署名または捺印ができない人がいるときは、立会人または証人はその事由を付記しなければなりません。また、注意すべき点として、上記の「1.死亡危急者の遺言」と「2.船舶遭難者の遺言」と異なり、口頭での遺言は許されていません。
4.在船者の遺言
船舶中にいる人も特別方式による遺言をすることができます。この遺言の要件としては、(1)船舶中にいる人が遺言をすること(2)船長又は事務員1人及び承認2人以上の立会いがあること。(3)遺言者、筆者、立会人および承認が各自遺言書に署名捺印してあること。署名または捺印ができない人がいるときは、立会人または証人はその事由を付記しなければなりません。この場合でも、口頭での遺言は許されておりません。
最後に、今回紹介した4つの特別の方式の遺言の注意すべき点として、遺言者が普通の方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)によって、遺言をすることができるようになった時から6ヶ月生存する時は、効力が生じなくなります。
次回は、不治の病にかかったとき、過剰な延命治療を打ち切って、自然な死を望む人が多くなっていますが、その場合に公証人役場で「尊厳死宣言公正証書」という作成することができます。次回は、このテーマですすめたいと思います。











